カラー
日本流行色協会(JAFCA)が毎年、最も魅力的な車両のカラーデザインを選ぶ「オートカラーアウォード」。19回目となる今回は12月10日、横浜美術館(神奈川県横浜市)で最終審査と表彰式がおこなわれ、マツダ『ロードスターRF』がグランプリに選出された。
エントリーされていたロードスターRFのカラーは「マシングレープレミアムメタリック(エクステリア) / オーバーン(インテリア)」というコンビネーション。審査員からは授賞理由として「デザインしたことを感じさせないほどに、完成されたデザイン」、「ソウルレッドに比肩しない色は出さないという強いアイデンティティを戦略の中心に置き、色彩をバリエーションではなく造形と一体で考え、回答を出している」、「液体を思わせるような金属感により、グラマラスでセクシーなデザインを作り上げた」といった評価が挙げられている。
担当デザイナーはマツダデザイン本部クリエイティブデザインエキスパートの岡本圭一さん。マシングレープレミアムメタリックはブランド全体の方向性を反映させて作られたものだという。「ブランドを群として強化してゆくにあたり、色彩面ではその第一弾がソウルレッドでした。そしてブランドの幅を広げて進化してゆくためには、別の色域でも新たな価値を提供していかなければならないと考えた結果です」という。
ではなぜグレーなのか。「マツダの歴史を振り返るとロータリーエンジンやスカイアクティブなど、独自のマシン感覚を持って開発されている。マシンをこよなく愛する企業なんだ、ということがあります」と岡本さん。「そして、マツダとしてはスポーティさの象徴として赤いイメージを柱にしたい。だからソウルレッドの次には別の鮮やかな色ではなく、メカニカルなイメージを象徴するグレーがベストなのではないかと考えたのです」と説明する。
そして機械の力強さや精密感を備えつつ、マツダとしての独自性も持たせなければならないということで「とことん金属の本質に近づける」ことを目指して開発したという。そこで「できるだけメタリックの粒子が見えない、けれども陰影の階調は豊かで上質にするということにこだわりました」とのこと。
これを実現するために、新しい塗装技術を開発したという。またボディパネルのわずかな歪みも陰影で見えてしまうほど表現力が豊かなため、これを見たプレス工程の担当者がプレス精度をさらに高めるための技術を開発してくれるなど「カラーデザイナーだけでなく、マツダ全体が一丸となってこの色を創作しました」とのことだ。
マツダ『ロードスターRF』には、より上質さを表現するために、ソフトトップにはないボディカラー、マシングレープレミアムメタリックが設定されている。
これは、「金属質、硬質なまさに名前の通りマシンを表現したいというカラーだ」とは、マツダデザイン本部プロダクションデザインスタジオカラー&トリムデザイングループアシスタントマネージャーの星正広さんの弁。このカラーは、“匠塗”の第2弾として開発され、これまでに『アテンザ』や『アクセラ』などに設定されてきた。
「ソウルレッドは感情を表現、訴えるようなカラーで、マツダの情熱を表現している。そしてマツダブランドの中心となるカラーだ」と星さん。一方でマシングレーは、「機械を表現しているソウルレッドとは真逆な世界観だ」と述べる。
今後は、「ソウルレッドを中心に据えカラーラインナップを揃えていく」とし、そのその最初がマシングレーだとした。
また、将来的には、「モノの深みや艶やかさを重点に置いたカラーなど、人の情を表現したソウルレッドを支えていくいろいろな質感や視点を表現するカラーを揃えていきたい」とコメント。
星さんは、「我々はクルマを、美しいアートマシンと呼んでおり、クルマを工芸品レベル、美しい芸術品にしたいという思いがある。その美しさにユーザーの心をぐっと惹き付けて、クルマに愛着を持ってもらいたい」と話す。その第1弾がソウルレッドで、その美しさを表現した。
そして、「情を表す色だけが美しさの表現ではない。例えば、昔のF1のモノコックボディから来る“マシン感”も美しい。戦闘機の機能美もそうだ。更には不必要なものを削ぎ落した、茶室にある茶器類などのシンプルな道具にも美しさがある」と述べ、「その美しさというのをひとつひとつ表現したい。それが揃った時に、マツダの情を表す赤を中心とした美しさのラインナップをユーザーに提供できるのだ」と想いを語った。
特にカラーについて、マツダデザイン本部プロダクションデザインスタジオカラー&トリムデザイングループアシスタントマネージャーの星正広さんは、ルーフの2トーンを挙げる。これはVSにオプションで設定しているもので、ルーフ中央部分をボディカラーではなくピアノブラックにすることで、「ファーストバックのスタイルの綺麗なラインがより見えることから、美しいラインを際立たせる2トーンを設定した」と話す。
そして、ボディカラーではマシングレーが設定された(ソフトトップ仕様には設定なし)。“匠塗”第2弾のこのカラーは、「粒子の細かい薄膜のアルミの塗料なので、RFのボディ面に表される綺麗なリフレクションがこのマシン感をより際立たせ、クルマとしての硬質な感じが表現されている」と述べる。
試乗車のボディーカラーは、リアルな金属的質感を伝えるという「マシーングレープレミアムメタリックだ。最近発表されるマツダ車で頻繁にアピールされる色で、駐車場にたたずむRFを見ると、まるで専用カラーのようだ。両側が盛り上がったフロントフェンダーと、ティアドロップ形状の小さなキャビンを組み合わせたロングノーズショートデッキの抑揚のあるスタイルが強調され、文句無しにカッコイイのだ。特に斜め後方から見た「塊(かたまり)感」は絶品で、スポーツカーを所有する歓びの一つである「見た目」を満足させるという点では、日本車、輸入車を含めてトップクラスに入るのは間違いない。
ロードスターRFのボディカラー、マシーングレープレミアムメタリックは、雨が降った時の車体にできる水滴がとにかく美しい!(カラー&トリムデザイングループ・星正広氏)