エクステリア
ロードスターRFの特徴は、ネーミングのRFが「Retractable Fastback(リトラクタブル・ファストバック)」を意味するように、そのスタイルとルーフの収納方法にある。ファストバックとは、横から見たときのシルエットがルーフからリヤエンドに向けてなだらかに続くようなスタイルのこと。ロードスターRFは名前のとおりに、優雅なルーフラインを持つだけでなく、後ろから見ると左右のピラーの間が凹んだ、ミッドシップスポーツカーのようなトンネルバックスタイルを採用している。
そしてルーフはリヤのピラーを残した格好で収納する新方式を採用した。ちなみにルーフの天井部分だけが開放されるスタイルは「タルガトップ」と呼ばれている。しかし、ロードスターRFは、運転席の頭の後方となるバックウインドウもオープン状態となる。ここが従来のタルガトップとは異なる点だ。ピラーを残しつつも頭上と後方をオープンにする方式はほかになく、そのために決まった名称もない。試乗会では「新しく、ぴったりの名前を教えていただければ登録商標にしたい」とのマツダの開発者の冗談を聞くこともできたほど革新的な方式なのだ。
従来のロードスターにも電動ハードトップモデルの設定はあった。しかしどちらかというとキャンバストップの素材を樹脂と金属に変えただけのシンプルなスタイルだった。それに対してロードスターRFはいわゆるタルガトップであり、長所はファストバッククーペのようにスタイリッシュな点と謳われている。初公開は2016年3月のニューヨークオートショー。そのときから話題になっていたスタイルだ。
マツダ ロードスターRFはソフトトップモデルとホイールベースは共通で、車体も全長と全幅は同一。車高のみ5mm高くなっているそうだが、つまりほぼ同じということだ。外観的な印象としては前後フェンダーの盛り上がりが強調されているようで、走りを積極的に楽しませる後輪駆動車であることが伝わってくる。
「軽量・コンパクトであること」「ホイールベースを変えないこと」「荷室を犠牲にしないこと」。ロードスターRFの開発にあたってはこの3要件を守ったとマツダでは説明する。そのいっぽうで新しいボディスタイルを実現したのだから、「チーム一丸となっての情熱と挑戦心がなければ、このプラン、このデザインは絵に描いた餅で終わっていたかもしれません」と、開発主査の中山雅氏の言葉に納得できる気がする。中山氏はチーフデザイナーも兼任するだけあって、スタイリングへのこだわりも強い。
僕が感心するのは1960年代から70年代にかけてのデトマゾ・バレルンガやランチア・モンテカルロを彷彿させるリアクオーターピラーによる美しいスタイリングだ。さらにそれでいて、乗ったときは低くて短いウィンドシールドによる、英国のライトウェイトスポーツのような古典的な爽快感を維持している点にも感心した。
マツダのスタイリングの特徴は(しろうと目にだけれど)無駄のないラインで構成されていて細部にいたるまでオモチャっぽい要素がいっさい見当たらないところだ。ウケるからといった子どもっぽいディテールがないのはすがすがしい。運転席からボンネットをみるとシャープなエッジと張りのある面とで出来たボンネットはまるで工芸品のようだ。オーナーのプライドになるはずである。
マツダ ロードスターはご存知のとおり小型スポーツカーで、ソフトトップの幌を備えた2人乗り。車重が1トンを切る軽量ゆえ現代では貴重になったライトウェイトスポーツと呼ばれてきた。そこに追加されたのがロードスター RF。トップの部分だけが電動でトランクに格納されるいわゆるタルガトップを持つ。特長はクーペのような美しいスタイリングだ。
ロードスター RFはリアクォーターピラーがなだらかにトランクへと向かって続くスタイルで「ファストバッククーペを意識した」(デザイン担当者)というだけあって、従来ロードスターに設けられていたハードトップモデルとは明らかに一線を画している。まるでディーノやランチア モンテカルロといったイタリアのファストバックスポーツカーのスピリットを現代によみがえらせたかのようだ。
ロードスター RFの、あえてピラーを残したファストバックスタイルは、ソフトトップ仕様のデザイン上の制約から「仕方なく採用された」のではなく、「誰もが美しいと思える“小さな”スポーツカー」として表現されたカタチなのです。なるほど、ルーフを閉じた状態のロードスター RFは、特に斜め後ろから見ると、胸打たれる魅力があります。
今回の4代目マツダ・ロードスターも商品企画の初期段階から、電動ハードトップありきだった。先代の3代目ロードスターでも途中に「RHT(リトラクタブルハードトップ)」を追加してからは、ソフトトップよりRHTのほうが販売台数が多くなったからだ。……なのに、先行したソフトトップの設計開発では、そんなことはお構いなしにギリギリのパッケージングをした。そこにソフトトップよりかさ張るハードトップを押し込めようとしても、とても入りきらない。当然である。
その独特のスタイリングから「RF(リトラクタブルファストバック)」と名づけられた新型リトラクタブル・ロードスターは、そんな不都合な現実(?)を逆手にとったデザインだそうである。試作段階では強引にフルオープン形状にする方法も検討されたそうだが、それでもソフトトップと同じスタイルにはならない(=オープン時には先代RHTと同等か、それ以上に盛り上がりが残る)し、RHTとは比較にならないくらいに複雑怪奇で重い機構になってしまう。
「収納してもハミ出てしまうなら、ハミ出した状態でカッコよくすりゃいいじゃないか」との発想が、そのハミ出し部分を美しくカバーするタルガトップ風スタイルにつながった。ロードスターRFは見た目にはタルガトップだが、実際のリアウィンドウは格納ルーフと一体である。オープン時にはウィンドウも同時に格納されるので、シート背後は貫通した巨大ロールバーのような形状になる。よって厳密にはタルガトップではなく、オープン時の開放感はタルガトップを確実に上回る。
ロードスターRFを特徴づけているのは、1970~90年代のミドシップスーパーカーを思わせるリアクオーターピラーの造形である。ソフトトップのロードスターに続いて、RFでもチーフデザイナーをつとめた中山 雅氏(現在はロードスター企画開発全体の主査に昇格)によれば、RFのデザイン画は、迷いなく、あっという間に、ひと筆描きのごとくできあがったという。
ルーフを逆手に取ったファストバック(あるいはタルガトップ)にする着想を得た時点で、「もともとのロードスターのフェンダーラインや全長を生かすなら、ルーフの曲線、そしてファストバックの着地点は、これしかありえません」と中山氏。あとはビジュアル的には寸分も動かせないセンを、いかに技術的に再現するか……だった。とくに苦労したのは「機内持ち込みサイズのキャリーバッグ2個を収納できる」というソフトトップと同等の積載能力を両立させること。普通はピラーの着地点とトランクリッドの分割線が同じ位置になるが、そうするとルーフラインかトランク開口部のどちらかが犠牲になる。
そこで、RFではクオーターピラーを含む可動カバーとトランクリッドを“はめあい”形状にすることで解決した。これを言葉にするのは簡単だが、実際にはギリギリのスキ間にモーターを仕込んで、車体に複雑な荷重がかかった状態で作動を保証するのは簡単なことではなかった。その開発には壮大なドラマがあったのだろうが、最終的には中山氏に「最初にひと筆描きしたラインをほぼ完璧にカタチにできた」といわしめる結果となった。
RFの外観諸元は、ルーフ分の5mmをプラスした全高1245mmのみがソフトトップモデルからの唯一の変更点で、全長3955mm、全幅1735mm、ホイールベース2310mmは同じ。相変わらずコンパクトで扱いやすそうだ。
第一はデザイン。全長4m未満の2座オープンをベースに、よくもここまでのものを作り上げたものだと感心させられる優美なプロポーションとディテールを持っている。それは単に綺麗なだけでなく、奥底に研ぎ澄まされた緊張感を帯びている。
恐らくそれはロードスターRFが、いわば引き算のデザインで作られているからだろう。全長が短く、ウェストラインも低いクーペを格好良く作るのは難しい。ちょっと油断すれば餅の上にみかんを乗せた“鏡餅ルック”になってしまうからだ。ましてこのクルマの場合、ベースとなるソフトトップモデルがすでに存在している。デザインは、表現を盛り付けていく足し算デザイン系の「魂動デザイン」の文法に沿ったものだ。
そのロワボディのデザインとの連続性を持たせながらクーペルックとして違和感のないものにするうえで、余計なことをやる余地など一切ない。とにかく最適のシルエットや面構成を薄皮一枚レベルの見切りで作り込んでいくしかない。デザイナーやモデラーにとっては最高に難しい作業だが、完成品を見ると、その作業にどれだけの執念を燃やしたかが伝わってくる。その引き算デザインがこのクルマが緊張感を放つ原動力となっているのだろう。クルマのキャラクターもフォルムもまったく異なるが、昨年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカー『RX-VISION』と共通するオーラで、ソフトトップのロードスターを含むマツダの他の現行モデルと全く異なる香りがある。
ロードスターと言えばソフトトップのオープンカーというイメージが強いと思うが、この「RF」はハードトップ。セキュリティ面などで不安というユーザーの意見や、スポーツカーファンだけでなく多くの人に楽しんで欲しいとの思いが生んだモデルだ。RHTなど、今までのモデルもハードトップは存在したが、大きな違いはRF(リトラクタブル・ファストバック)という名の通りファストバックであること。これに、開発主査兼チーフデザイナー・中山雅氏は「誰が見ても自然体の美しさを感じられるものにするためには必然だった」と語る。しかし、それは同時に、爽快なオープンエア感と独特の包まれ感を、美しいファストバックと両立するという、今までの考え方では不可能な難関を超えなければならないことを意味する。デザイン、設計、生産技術エンジニアがチーム一丸となってチャレンジに立ち向かうことができたから生まれたクルマなのである。今回の試乗会では、各分野の担当者に話を聞くことができたが、皆一様にロードスターというクルマに携われることへの喜びを口にした。その求心力こそが、ロードスターRFの研ぎ澄まされた完成度にも繋がっているのだろう。
まず、ネーミングがRHTからRFに変わっています。これは単に屋根が硬くなって電動開閉するのでなく、ファストバックスタイルになる、ということの表れです。
ファストバックは、日本車ならかつての初代セリカLBのような形でクーペボディのルーフからトランク(ハッチゲート)がなだらかに下がっているスタイルです。
RHTはルーフを閉じるとお供え餅のような丸っとした屋根が乗っかるようでした。これがRFではスタイリッシュにカッコイイと言える。さすが、スーパーカー好きの中山チーフデザイナーであり新主査が手がけただけはあるな、と思わせます。
その開く様子も秀逸です。トレーシーアイランドの秘密基地からサンダーバード2号が出てくるのを思い出しながら意味もなく開閉させたくなるハズです。
スタイルの好き嫌いは人それぞれですが、個人的にはオープン、クローズドのどちらの状態でも「キレイ」だと思います。聞くところによると、最初からハードトップモデルの導入は決まっていたとのこと。デザインも十分に練られたということでしょう。
素直に「なるほどそうだな」と思ったのは「NCではソフトトップとRHTとでオープン状態のスタイルに差がなかったから」の判断。そこでNDでは凝った昇降構造を採用しルーフとリヤウインドのみ格納、オープン時に“ファーストバック部分”を残すスタイルとなった。
連想するのはフェラーリ『308GTB』やシボレー『コルベット』など。後ろにルーフラインを流すスタイルは古今東西、美しいものだ。なのでリヤクォーターウインド“風”の黒いパネルは気にしないことにした。またソフトトップとトランク容量は事実上変わらないというのも素晴らしい。フロントピラーがボディ色というのも、ソフトトップとはまた別の落ち着いた味わいがある。
ポルシェ911のタルガトップと言えば分かり易いだろうか。試作の段階では、先代モデルと同様にルーフの完全収納も検討されたとの事であるが、最終的にはスタイルを重視してこのスタイルが採用されたそうだ。
デザイナーが拘ったというシルエット、キャビンの美しさは、どう猛なスーパーカーとは違った親しみやすいデザインである。親しみやすさの一番の理由はコンパクトなボディ(全長3,955mm、全幅1,735mm)だからだろう。
スポーツカー好きである私は、ファストバックスタイルは古くからのクーペスタイルの王道であり好きだ。そのため、ロードスターRFも一目で気に入った。特に斜め後方からみたスタイルは、リアフェンダーからリアルーフにかけての流れるラインは綺麗である。ルーフを格納しても、リアルーフが残るので、華麗のスタイルは変わらないのは嬉しく、私もこのスタイルを採用したことに賛同する。
電動ハードトップのロードスターは、ロードスターとしては3代目となる先代モデルの途中で加わり、先代ではソフトトップと同じようにルーフ全体がオープンになるRHT(リトラクタブルハードトップ)でしたが、現行モデルの電動ハードトップは頭上がオープンになるRF(リトラクタブルファストバック)と呼ばれるタルガトップになりました。
電動メタルトップの形態をRFとした理由はズバリ「カッコいい電動ハードトップのロードスターにするため」だそう。確かに今になって先代ロードスターのソフトトップとRHTを後ろや側面から見比べてみると、RHTはピラーの形が美しく見えなかったのに対し、RFではファストバックスタイルによる美しさを実現している点は素晴らしいと思います。
クローズドでは伸びやかなファストバックスタイルの格好よさは文句なし! リヤフェンダーには、カラクリ式のメタルトップを収納させるための無粋な切り欠きは一切ない。オープン状態ではCピラーを残したまま、頭上と運転席真後ろの窓が開放される。多少の包まれ感を残しながらのオープン走行だ。これが、なかなかに具合がいい。
そして、「ルーフを閉じているときのスタイリングに関してはやりあげたと思っている」と高い完成度に自信を見せる中山さん。閉めたときのルーフラインは緩やかな、なだらかなアーチを描いてリアのデッキに溶け込んでいく、いわゆるファストバックスタイルだ。
中山さんは、「このファストバックスタイルで特異な形がリアにある」という。真後ろから見るとピラーからリアウインドーにかけて抉れている。アメリカと日本ではこの形のことを“トンネルバック”と呼んでおり、ヨーロッパでは“バットレス”という名前のスタイルだ。
このスタイルをなぜ取り入れたのか。「ファストバックの美しいスタイルと国際線の機内に持ち込めるキャリーバッグが2個入るトランクを実現するためだ」と述べる。もしリアウインドーがピラー下端のまで来ているとトランクルームは小さくなってしまうことから、このデザインが採用されたのだ。
斜め後ろから見たときに、フェラーリ ディーノ等のミッドシップスポーツで見られるようなリアウィンドウを奥に置きピラーで囲む手法が展開されており、極めて印象的な後ろ姿を披露してくれる。その様は、かつてこれほど後ろ姿で語る日本のスポーツカーがあっただろうか? といえるほど。
またそのピラーがしっかりと残ることで、ソフトトップを採用するノーマルのロードスターと同じはずのリアフェンダーが、より張り出して見えるのも印象的な部分だ。