足回り/タイヤ

ハードトップ化のため重量バランスやボディ剛性の見直しが行われており、加えてサスペンションの設定も専用だそうだ。ダンパーと電動パワーステアリングの設定にも専用チューニングを採用している。ソフトトップに対して20kgという重量増(それでも1,100kgと軽量だが)に対応してダンパーのガス圧を調整。さらにフロントのスタビライザーやリアのスプリングとバンプストッパーなども見なおされている。

マツダの開発者によると、ハンドリングは重量増加ぶん(といっても20kg増にとどまっているのだけれど)に対応するため、シャシーの増強やサスペンションの設定を見なおしたという。おかげで足まわりにはしっかり感が出ている。ステアリングは低速と高速とで電動アシスト量を細かく変えてある。

ボディ剛性にも決定的な違いがある。ルーフという剛性支持部材があることだけが、走りのフィーリングに貢献しているのばかりだと錯覚していたら、実はフロアトンネルにも、左右を強固に繋ぐメンバーが追加されているという。どうりで走りの質が違うわけである。

さらにはリアホイールハウスにも制振材パネルが貼られているほか、遮音材も贅沢に追加している。質感の高さはそれも貢献していることは体感できた。装着タイヤも205/45R17だ。16インチのロードスターよりもタイヤ剛性にも余裕が感じられたのだ。

もう1点、大幅に改善されたのは高速の直進安定性だ。既述のように、歴代ロードスターは低速にパラメーターを全振りしたスポーツカーだった。NDで多少高速旋回のスタビリティに手が加えられたとは言え、直進はまた話が違う。低ヨー慣性モーメントは、ハンドリングに絶大なメリットがあることと引き替えに、路面の不整で車両の進路が乱されやすい。チョロチョロするのだ。それがウソのように改善されていた。試乗から戻って最初にしたことは、操安性のエンジニアを捕まえて、何をやったのかを聞くことだった。リヤサスペンションのブッシュ容量を増やしたことが一番大きいのだと言う。

RSの足元には、メーカーセットオプションのBBS社製のブラック17インチアルミ、レッドに塗られたブレンボ社製4ピストンキャリパー、ビルシュタイン社製ダンパーが奢られていた。専用チューニングが施されているので、段差でもカドが取れたしなやか動きを見せてくれ、その上質な乗り味はRFが持つ特性にぴったり。ロングドライブにも使えるGTカ―としての素養も兼ね備えていそうだ。

試乗車は穏健グレードの「VS」。タイヤがソフトトップより大径の17インチとなるのはRFだからではなく、2リッターだからである。海外向けの2リッターはソフトトップでも17インチが基本だ。車重が1.5リッターのソフトトップより約50kg重いので、全体に重厚感があるのは当然としても、同時に、RFはより落ち着いたフットワークを意図した調律になっている。なるほど従来のソフトトップより、低速でもアシは滑らかに動いている感じである。

また、 クルマ全体の剛性感もソフトトップより好印象なくらいで、「ブリヂストン・ポテンザS001」というタイヤチョイスもあって、路面からの突きあげも、いかにも丸められて快適だった。ただ、今回のRFのサスペンションは細部のチューニングだけでなく、リアアッパーアーム付近に新しいフリクション低減策が盛り込まれているのも、奏功しているっぽい。ソフトトップ(のリアスタビライザー装着車)にあるリアが少し突っ張るようなクセが、RFではまったく気にならなかったからだ。

この新リアサスはどうやらRF専用というわけでもないようで、開発陣は明言しなかったが、遠からずソフトトップにも適用される気がしてならない(あくまで個人の感想です)。2リッターは1.5リッター比でトルクが太いだけでなく、許容回転数も600rpmほど下げられている。つまり、1.5リッターのようにブン回すのではなく、もっと気軽な走りを想定している。

サスペンションは車両重量の増加に対応するためか、1.5リットルのノーマルロードスターに比べてロール剛性が高められているようだった。細かいハーシュネスはそれなりに室内に伝わってくるが、乗り心地はすっきりしており好感が持てた。また、アンジュレーションのきつい場所を通過してもぐらつきがなくなるなど、スタビリティは全般的に向上したように感じられた。

そしてコーナーだ。RFは1.5リットルよりも1サイズ太い205/45R17サイズのブリヂストン・ポテンザS001を履く。加えてRSグレードはビルシュタインダンパーが組み合わされるのでコーナリングの安定感はバツグンにいい。ボディ剛性もソフトトップモデルより向上されているようで、ステアリング操作に対するクルマの動きの正確さは高い。

足回りは、私はNR-A(ナンバー付きワンメイクレースのベース車)を除くソフトトップのロードスターが、荒れた路面での乗り心地の悪さやステアリング操作に対するクルマの反応が過敏過ぎ、エンジンとミッションはいいのに乗っていてあまり楽しくない点に強い不満を持っていました。

それに対しRFのRSは専用チューニングされたサスペンションと電動パワステの効果なのか、乗り心地は高級感を感じるNR-Aには遠く及ばないものの納得できるくらいには改善され、ステアリング操作に対し過敏すぎるクルマの動きもなくなりました。RFの開発で得た成果がなるべく早くソフトトップにも盛り込まれるのを期待したいところです。

日本製ダンパー(メーカーは日立オートモーティブ)を使うVSの足回りは、日本製ダンパーを使うソフトトップのSグレード系に比べると、前述した不満は改善されてはいますが、合格点には届かずといったところで、乗り味という観点だとRSがベストチョイスと言えます。しかし現在RSのATは設定がなく、「インテリアはVSの方が好み」という人もいるでしょうから、RFはプレミアムなロードスターでもあるのも踏まえると、RSのATやビルシュタインダンパーのVSへのオプション設定いった選択肢も今後広げて欲しいと思います。

足まわりも若干、コンフォートよりであった。乗り心地がよく、ゆったりと動く。もちろんゆっくりといっても、“スポーツカーとして”というレベル。ロードスターならではの人馬一体感は微塵も変化はない。思い切りアクセルを踏み込んだときの加速感はなかなかのもので、そのサウンドは勇ましく、これも格好のよいものであった。

POTENZA S001は、ドライ&ウェット性能を向上させながら、タイヤ構造の最適化により運動性能を高めたハイパフォーマンスタイヤ。ロードスターRFの特長である高い操縦安定性と運動性能の実現にあたり、重要な役割を果たしている。

納入サイズは205/45R17 84W。

例えば今回試乗したVSグレードならば、大人っぽさをさらに醸成する要素として、装着タイヤにも注目した。試乗車はAT・MT共にブリヂストンのスポーツタイヤブランド“ポテンザ”を装着していたわけだが、VSグレードならば例えばミシュランのパイロットスポーツといった、転がりの良さと当たりの丸さ、ウェット性能の高さを実現したタイヤの方が遥かに“気分”だろうと思えた。

比べるとマツダ ロードスター RFの装着タイヤはちょっと“ピンピン”としていて、スポーツするには良いが、大人の世界観を表現するには今一歩といえるものだった。